牛馬童子 箸折峠
  
激しい雨の中にたたずむ牛馬童子です
  
大坂本王子から近露王子に向かう途中、箸折峠の小高い丘に、鎌倉時代の建立と推定される宝篋印塔(県指定文化財「近露の宝塔」)があります。
これは花山法皇の熊野御幸のおり、経典をこの地に埋納したとの伝説にもとづいて立てられたものです。藤原氏の策略にあって出家とともに皇位を失い、呆然とした心境のまま都を離れ熊野御幸に旅立った花山法皇は、この峠で萓の茎を折って箸にして食事をとろうとしたところ、茎から露がしたたり落ちました。法皇は「これは血か、露か」と物哀しげに側近にたずねたといいます。
以来、麓の里は近露、この峠は箸折峠と呼ばれるようになったといいます。宝篋印塔の裏手には明治時代に法皇の旅姿を偲んで彫られた石仏、牛馬童子がたたずみ、熊野古道中辺路のシンボル的な存在になっています。