発心門王子
 
発心門とは、仏の道に帰依する心を発する入り口(門)という意味で、熊野本宮大社を目前にして、熊野詣の人々はこの王子社の鳥居をくぐることによって神仏に近づく覚悟をしました。藤原宗忠は『中右記』に天仁二年(1109)、発心門王子の大鳥居の前でお祓いを受けたことを記録しています。また、建仁元年(1201)に熊野参詣をはたした藤原定家は王子社の近くにあった南無房という尼寺に宿泊し、発心門王子の境内の神々しさは思わず信心を発するほどであり、周囲の紅葉も素晴らしいと国宝『熊野御幸記』に書いています。発心門王子は熊野九十九王子の中でも別格の五体王子のひとつに数えられるようになりましたが、明治40年(1907)、三里神社に合祀となり、社殿も移築されました。現在の社殿は平成2年(1990)に復元されたものです。