和佐又山ヒュッテ---和佐又のコル---笙の窟---小普賢岳---大普賢岳---弥勒ヶ岳---稚子泊---七曜岳
---行者還岳---行者還避難小屋---天川辻---一ノ多和---トンネル口奥駈出合---トンネル西口
   
2009年4月25日-26日  曇り雪雨 強風
熊野奥駈道の中でも最も景色がいいが、きついコース大普賢岳から太古の辻までの北奥駈を歩き始めようとそろそろ山小屋も開き始めた頃を狙って計画した。もともと昨年歩こうとしたコースだったが、知人に相談したり、専門家にアドバイスを受けた結果、登山の経験もないずぶの素人がいきなりこのコースを歩くのは危険が多すぎるとのことで、昨年五番関までと大川口〜トンネル西口までを歩き、今回はトレックトラベルさんにガイドを頼んで、二回に分けて歩くことにした。4月下旬では残雪もあり、年によっては積雪のため、中止になることもありえるとのことだったが、休みの予定が詰まっていて、やむなくこの日にした。今回は和佐又山ヒュッテに前泊して、ここから大普賢岳から奥駈道に入り、南に下ってトンネル出合から下ってトンネル西口に出る一泊二日のコース。今回は夫にも同行してもらった。
25日は大雨で荒れ模様。でも26日の天気予報では晴れではないが、雨は止み、曇りとのことなので、とりあえず伊勢を出発した。12時48分近鉄宇治山田発、八木、橿原神宮経由で上市駅到着。バスの連絡が悪いのでここからタクシーで今夜の宿泊地、和佐又ヒュッテまで行った。駅に着いたころには雨は上がっておりヒュッテには16時ごろ着いた(写真)。ヒュッテ前には桜がまだ咲いていた。ロッジ個室に泊まったが、海抜1143メートルぐらいなので寒かったが、床暖房があったので助かった。6時に夕食で、セルフ形式だが、野草の天婦羅、岩魚の塩焼き、和え物などが幕の内になっており、まずまず。早々と夕食を済ませて、部屋にあるユニットバスで温まり、明日に備えて早めに就寝した。
翌朝、6時に起き、食事。風は強いが雨は降っていなかった。他の14名のパーティは5時に出発したとのこと。山の朝は早い。7時にトレックトラベルのガイドNさんが和佐又山ヒュッテに迎えに来てくれて、ヒュッテ横の大普賢岳登山口から出発(7:10)(写真)。降り口の奥トンネル西口まで登山に不必要な荷物は回送してくれるので助かる。なだらかな登りを行き、和佐又のコルに7時28分に到着(写真)。ガイドと話をしながらブナの尾根道を進むとやがて岩壁となり、その下に次々と自然岩窟が現われる。シタンの窟に8時1分に着き(写真)、続いて朝日窟を過ぎ(写真)(8:08)、途中鉄梯子、鎖伝いの道を通って62番靡、笙ノ窟に着いた(8:12)。これら岩窟のなかでも笙の窟が大きさ、迫力ともに一番で、大峰屈指の行場となっている。資料によると高さ3、3m、幅12m、奥行最大7mで、役行者冬籠りの古跡と伝えられ、平安時代以来、多くの修行が行われたとのことである。笙の窟から鎖場を通って日本岳のコルを過ぎ、さらに鉄梯子を登って(写真)石の鼻という大きな岩に着いた(8:49)。この岩の上からの景色がいいとのことで登ったが、あいにくの天気で山がかすんで見えたが、今一。このあとも桟橋や梯子を伝って(写真)小普賢岳に出た(9:01)。でも本当の小普賢岳は大普賢岳の北にあるらしい。梯子、鎖をたどり、小キレットを渡り奥駈道との合流点に出た。此のあたりではかなり気温も下がり、あたりの木々には樹氷。寒かったが白くて美しい。ここから大普賢岳まで100m(写真)。雪が散らつく寒さと樹氷の中を東側山腹から頂上を目指して進み9時50分に頂上に到着(写真)(標高1780m)。ここまではなんと予定よりも30分ほど早く着いているとのガイドの話にほっとした。でもいつもの私たちのようにきっと着くころにはかなり遅れているのだろう。寒いのでちょっとだけ休憩して反対側を下り奥駈道に合流。少し下ると水太覗に着いたが(10:15)(写真)天気が悪くて何も見えなかった。弥勒ヶ岳を過ぎると(10:27)サツマコロビを呼ばれる難所にさしかかった。梯子、鎖を頼りにトラバースを経て苔むす巨岩が点在する稚子泊に着いた(11:25)(写真)。途中屏風横と呼ばれる断崖絶壁があるのだが、幸か不幸か霧で何も見えず、足がすくむ事もなく通り過ぎた。この頃には風も強くなっていたが、稚子泊で少し風を避けられるところがあったので、ここで昼食。でも寒くて、手がかじかんでゆっくり休むこともできなかった。ガイドのくれた味噌汁とコーヒーのおいしかったこと。11時48分に稚子泊を出発して七ツ池、七曜岳を過ぎ、無双洞を通って和佐又にもどる分岐点にさしかかった(12:41)。七ツ池には水はなく残雪があった(写真)。バイケイソウの自生する尾根道を行くとやっと行者還岳が見えてきた。7月ごろになるとバイケイソウの白い花が咲き、このあたりから弥山にかけ一面の花回廊になるらしい。行者還岳は南側が絶壁で役行者が一度は引き返したとの伝説からその名がついたが、北斜面の稜線は花の季節には特に美しいとのこと。行者還岳頂上をめざす山腹に大阪工業大学ワンダーフォーゲル部員が意識不明になり死亡した場所を示すケルンが建っていた(13:36)(写真)。合掌して通り、行者還岳頂上まで後100mという道標の場所に来た(13:46)。頂上に13時58分に到着。標高1546m、頂上には如意輪棒があった。ここから行者還避難小屋に下る道が又鉄梯子や鎖をたどる難路。ここもサツマコロビと呼ばれていて疲れた体にはこたえたが、もうすぐ避難小屋につけると思い頑張った。この難路が終わったところが避難小屋(14:41)。風が強く、天気は回復しそうもない。避難小屋で小休止。中には10程の人がいた。ここまで2組のパーティに出合い、さらにこの小屋にこんなにたくさんの人がいるとは、奥駈道はやはり人気のコースなのだろう。しかも年配の人が多いのには驚き。14時50分に小屋を出発。この時には予定通り?1時間10分の遅れが出ていた。急いで小屋を後にして稜線伝いの道を先に進んだ。去年来たときは楽に歩けるのでほっとしたはずの道だったが、今回はその道がえらかった。頬をなぐる雹と強風という悪天候のためだろう。西風がこの頃には一段と強くなり、私はその風の中、バランスをとりながら歩くのがやっとだった。おそらく風速20mぐらいはあったのだろう。稜線ゆえにさえぎるものがなく、もろに風を受ける。帰って新聞を読んだら、紀勢線が強風のため運転中止だったとのこと。バイケイソウ、クマザサの中の道をひたすら歩くのみ。途中大台の方向に虹が見えたが、写真に撮ったら全然写っていなかった。一ノ多和を16時3分に過ぎ、トンネル口奥出合に16時36分に着いた。ここからは尾根道を外れて、トンネル西口まで急な下りが続く。この頃には私も夫もかなり疲労していたので休憩をして16時45分下り始めた。夫は膝を痛めて途中休憩をしながらやっと18時にトンネル西口に着いた。あわてて回送してもらってあるガイドの車に乗り、急いでもらい、何とか17時19分下市口発の特急に間に合わせてもらい感謝。自宅には22時頃到着した。
鉄梯子、鎖が頼りの急坂、しかも雪混じりの強風の中、登山経験もない私たちが無事歩けたのはやはりガイドをお願いしたお陰。本当にお世話になりました。

      

 

案内板の説明
   
笙の窟と周辺の山岳遺跡
大峰山脈は、山岳修験の発祥の地であり、修験の全国的中心地として古来より名高く、この付近では「笙ノ窟」をはじめ「鷲ノ窟」「朝日ノ窟」「シタンノ窟」が有名な行場として原形をとどめております。なかでも「笙ノ窟」は大峰七十五靡の六十二番目の行場であり「役の行者」(699年以前)の修行したところと言い伝えられ、平安時代から名僧、知識人がこぞって参籠修行されました。扶桑略記に伝えられる「日蔵上人道賢」の参籠冥界遍歴は北野天神縁起絵巻(国宝)にも描かれ広く知られております。
「笙ノ窟」において修行僧がのこされた和歌
日蔵上人(904-985)
  「寂莫のこけのいはとのしづけきに 涙の雨のふらぬ日ぞなき」
行尊大僧上(1055-1135)
  「草の庵なほ露けしと思いけむ もらぬ岩屋も袖はぬれけり」
西行法師(1118-1190)
  「露もらぬ岩屋も袖はぬれけりと きかすばいかに怪しからまし」
覚忠大僧正(1117-1177)
  「やどりする岩屋の床の苔筵 なりぬえこそねられぬ」
円空(1672頃)
  「こけむしろ笙ノ窟にしのべて 長き夜のこる法のともしび」
笙ノ窟は1995年「奈良県山岳遺跡研究会」が中心となり発掘調査がおこなわれ多数の出土品が発掘されました。このとき笙ノ窟に鎌倉時代からまつられていた「銅造不動明王立像」の「条帛」の尖端や「頂蓮華」も発見され改めて本像に装着されました。平成11年笙ノ窟一帯は村の文化財指定第一号に指定されております。この周辺の大自然は昔から大切に守られ今日の姿をとどめております。自然保護について皆様方の尚一層のご協力をお願いします。

上北山村観光協会

     

交通
近鉄  宇治山田-上市 乗車券 1670円 
宇治山田-上市 特急券 1280円
近鉄 下市口-宇治山田  乗車券 1670円 
下市口-宇治山田 特急券 1280円
   
宿泊
和佐又山ヒュッテ
〒639-3704 奈良県吉野郡上北山村西原1055
TEL 07648-3-0027
個室ロッジ1泊2食 17850/2人 弁当1000円/2人
   
吉野近鉄タクシー   0746-32-2961(上市)
   
トレックトラベル
〒649-6203和歌山県岩出市桜台660
TEL 0736-62-7028
URL  http://www/trektravel.co.jp