西行庵  2008.9
   
この辺りを奥の千本といい、この小さな建物が西行庵です。鎌倉時代の初めのころ(約八百年前)西行法師が俗界をさけて、この地にわび住まいをした所と伝えています。西行はもと、今日の皇居を守る武士でしたが世をはかなんで出家し、月と花とをこよなく愛する歌人となり、吉野山で詠んだといわれる西行の歌に
   とくとくと落つる岩間の苔清水
     汲みほすまでもなきすみかかな
   吉野山去年の枝折の道かへて
     まだ見ぬ方の花をたずねむ
   吉野山花のさかりは限りなし
     青葉の奥もなほさかりにて
   吉野山梢の花を見し日より
     心は身にもそはずなりにき
この歌に詠まれた「苔清水」はこの右手奥にあり、いまなおとくとくと清水が湧き出ています。旅に生き旅に死んだ俳人松生芭蕉も、西行の歌心を慕って二度にわたり吉野を訪れ、この地で
   露とくとく試に浮世すすがばや
と詠んでいます。

案内板より