御船島

  
国史跡 熊野三山 熊野速玉大社 御船島 案内板
御船島は行政的には三重県南牟婁郡紀宝町に属するが、熊野速玉大社の境内の一部で、熊野速玉大社の例大祭御船祭で祭礼の場となる島である。御船祭は熊野夫須美大神が年に一度、神幸船で御船島に渡り、再び速玉大社の社殿に還ってくるという行事で、夫須美大神が来臨した姿を毎年複演している祭礼である。神輿から神霊が諸手船に曳かれた神幸船に移されて神楽を奏すると熊野大橋下の川原で艫を岸につけて一列になっていた九漕の早舟が一斉に岸を離れ、御船島を三周して対岸の相筋川原にゴールする上りの早舟競漕が始まる。上りの早舟競漕が終了すると、斎主船に曳かれた諸手船、神幸船が上ってくる。諸手船の上では女装の演者が櫂を回して行く手を遠望するしぐさの「ハリハリ踊り」が行われる。斎主船が相筋川原に着くと、御船島の上に立つ神職の合図で、下りの早舟競漕がスタートする。岸で待機していた早船が、御船島を二周して神社裏の川原にゴールする。勇壮な競漕をみせる早船は、古式を保った舟形で鯨船の祖形といわれ、中世に強力な武器をもってその名を知られた熊野水軍の面影を偲ばせるものである。『夫木和歌抄』という鎌倉後期の私撰和歌集に御船島が登場する歌がある。
三熊野のうらわにみゆるみふね島  神のゆききにこぎめぐるなり